「それにしてもさー、派手に転んじゃったねー」
はぁ、とトージが小さなため息をついて、僕の右足首に視線を落とす。トージの視線の先には、くるぶしの辺りがぷっくり赤く膨れてしまっている僕の右足首がある。 「……ごめん」 「セツは昔っからおっちょこちょいだもんね。よく転んで足に怪我作ってたしさ」 そう、トージと一緒に歩いていた僕はうっかりしていたのか、情けないことに小さな段差で躓いて転んでしまい、その際に盛大に足をひねってしまったのだ。たしかに僕はどこか抜けていたりどんくさいところがあるとは自覚していたけれど、ここまで間抜けだとは流石に思っていなかった。 右足首は今でもじくじく熱を持っていて、こうして歩かず地面に座っているだけでも物凄く痛む。とりあえず今は楽な体制でいるけれど、今僕が座っている場所は一応往来の真ん中だ。ずっとこのままでいるわけにもいかない。家に戻らないといけないとはわかっているけれど、痛む足では歩くどころか立ち上がることも難しいような状態だ。 「ちょっと失礼、っと」 トージが腰を落として、痛みで立てずに地面に座ったままの僕の足首に触れる。トージの指が僕の足首に触れたその瞬間、右足首から全身に鋭い痛みが駆け巡った。 「いっ……」 「あらら、どこが一番痛い? もしかしたら骨折してるかも」 「骨折って、そんな……その、腫れてるところの下あたりが痛いけどさ」 「こういうのでも骨折しちゃうもんだよ。知らないの? んー、ここかな?」 トージがその、僕が痛むといった箇所をそれなりに強く押す。勿論痛くないわけがない。さっきよりも一層鋭い痛みが全身を駆け巡り、痛みのあまり叫びたくなるのをぎゅっと唇をかんで必死に堪えた。 「あいってててて……」 トージはそんな僕の顔をじっと見つめていた。何事かと僕が首を傾げれば、少し頬を赤らめたトージが、 「やだ。痛みに悶えるセツの顔、すっごくいい」 この人は何を言っているんだろうか。 僕が不快感を露骨に顔に出すと、トージが特に悪びれる様子もなく、 「だってさー、セツがかわいいんだもん」 「かわいいって言うな。それとトージ、気持ち悪い」 「ごめんごめん。で、歩ける?」 「ちょっと無理かもしれない。だからその、肩を貸してくれると嬉しいんだけど」 「おっけーおっけー。……よっと」 トージの腕が何故か僕の肩ではなく、背中に回った。 一瞬、こんな所で抱きしめられるんじゃないかと身構えてしまったけれど、背中に回されたトージの腕に力が込められ、その腕がひょいと僕を持ち上げる。浮遊感が気持ち悪い。 そのまま僕は米俵みたいにトージに担がれてしまった。トージは涼平ほどでもないけれど僕と結構な体格差があるし、体は細めだけどそれなりに力はあるし背も高い。背の小さい僕を担ぎ上げることぐらいわけないだろう。 「ト、トージ! 降ろしてってば」 「降ろしてもセツは歩けないじゃん」 「そりゃ歩けないけど……っ! でもこんな風にしろなんて言ってないよ!」 捻った足が痛むので下半身を動かすことは出来ないから、上半身だけで必死にトージに抵抗をする。しかし上半身だけでは上手く抵抗が出来ないから、全く意味がない。 むきになって頭に血が上ったのか、足を動かしてしまいまた痛みを必死に堪えることになった。 「セツ、暴れちゃ駄目だって」 「だったらこの状態なんとかしてよ……」 「ん、じゃあお姫様抱っこ?」 「もっと嫌だよっ」 こんな状態じゃ顔は見えないけれど、トージのけらけらという明るい笑い声が聞こえる。 「俺はお姫様抱っこでもいいけどねー。ま、このまま病院に連れてってやるから、じっとしてなさいって」 「……体制を変えるって選択肢はないの?」 「ないね。怒るセツがかわいいからやめない。それとも一人で歩けるってならいいけど」 「かわいいって言うな。……わかったよ、でも」 「でも?」 「あとでトージのこと一発殴りたい」 「ったく、セツは昔っから乱暴なんだからなー」
また 、トージのけらけらという明るい笑い声が聞こえた。
なんかよくわかんないんですが、怪我したセツをトージがひょいと担ぎ上げているビジョンが浮かんだので適当に文にしてみた、らこうなった。
トージはだいたい「セツお持ちかえりー」とかなんかそんなノリな気がしました。
自分で言っといて意味がよくわからない。
これいつか涼平バージョンも書きたい。
それにしてもトージの台詞だけ異様に書きやすい。
|